成年後見はどんなケースで必要となるのか、また親族は後見人になれるのかなれないのかについて

成年後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などによって判断能力が低下した成人(18歳以上)の身の回りの世話や財産の管理を行う制度です。この制度の目的は、判断能力が欠けてしまった方が適切に保護されるようにすることであり、具体的には以下のような支援が含まれます。

  • 不動産や預貯金の管理
  • 年金の受け取りと管理
  • 税金や公共料金の支払い
  • 医療や介護施設への入所契約
  • 介護施設費用や生活費の送金

成年後見制度は、大きく分けて「任意後見制度」と「法定後見制度」の2つの制度に分類されます。それぞれの制度について詳しく見ていきましょう。

目次

任意後見制度と親族の後見人

任意後見制度とは

任意後見制度は、判断能力がまだ十分にある段階で、自分の意思に基づき後見人を選任する制度です。この制度の特徴は、本人が自ら選んだ後見人が、判断能力が低下した際にその役割を果たすことができる点にあります。任意後見制度の流れは以下の通りです。

  1. 契約内容の決定:本人が判断能力があるうちに、誰にどのようなことをお願いするかを決定します。
  2. 公証役場での契約締結:契約内容が決まったら、本人と後見人となる人が公証役場で任意後見契約の公正証書を作成します。
  3. 登記:その後、法務局で成年後見人の氏名や委任される範囲などが登記されます。
  4. 任意後見監督人の選任:判断能力が低下した後、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てます。
  5. 後見人による任意後見の開始:家庭裁判所が任意後見監督人を選任すると、後見人による任意後見がスタートします。

親族が後見人になれるケース

任意後見制度においては、親族が後見人となることが可能です。具体的には、以下のような人物が後見人に選ばれることができます。

  • 本人が指定した親族
  • 友人など本人が信頼する人物

任意後見制度では、親族だけでなく、専門的な知識を有する行政書士なども後見人として選任されることがあります。任意後見の監督人として選任されるのは、一般的には親族ではなく、専門知識を有する第三者である場合が多いです。

任意後見監督人の選任者

任意後見監督人の選任を申し立てることができるのは以下の者です。

  • 本人
  • 配偶者
  • 四親等以内の親族
  • 任意後見を受任した者

任意後見監督人は、任意後見人が適切にその職務を遂行しているかを監督する役割を担います。この役割には、通常、法律の専門家や行政書士などが選任されることが多いです。

法定後見制度と親族の後見人

法定後見制度とは

法定後見制度は、判断能力がすでに欠けている場合に、家庭裁判所が後見人を指定する制度です。この制度は、本人の判断能力が低下してから利用されるものであり、家庭裁判所が後見人を選任します。法定後見には、以下の3つの種類があります:

  1. 成年後見:最も広範な後見制度であり、完全な判断能力がない場合に適用されます。
  2. 保佐:一部の判断能力が欠けている場合に適用され、保佐人が財産や契約の管理をサポートします。
  3. 補助:軽度の判断能力の欠如がある場合に適用され、補助人がサポートを行います。

親族が後見人になれる可能性

法定後見制度においても親族が後見人として選任されることがありますが、以下の条件や状況によっては親族以外の者が選任されることもあります:

  • 意見の対立:本人や家族間で意見が対立している場合、親族以外の第三者が後見人に選任されることがあります。
  • 財産の高額:保有財産が高額である場合、親族よりも専門知識を有する第三者が後見人として選任されることがあります。

法定後見制度は、家庭裁判所が厳正に審査を行い、最も適切な後見人を選任します。そのため、親族が後見人として選任されない場合もありますが、これにより適切な保護と支援が確保されることが目的です。

成年後見制度と家族信託

成年後見制度は、判断能力が低下した後のサポートを提供する重要な制度ですが、判断能力が低下する前に「家族信託」と併せて「任意後見制度」を検討することもおすすめです。家族信託は、信託契約を通じて、財産管理や運用を任せる仕組みであり、後見制度と併用することでより効果的に本人の意思を尊重しつつ、適切な管理が可能になります。

家族信託についての詳細な情報は、以下のリンクからご確認いただけます。

成年後見制度と家族信託は、どちらも大切な制度であり、適切に利用することで、本人の生活や財産の保護をより確実にすることができます。自分自身や大切な人が将来にわたって安心して過ごせるように、今から準備を始めることをお勧めします。

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