戸籍が移動すると認知情報が消える!?戸籍における身分事項の移記の落とし穴について

相続手続きの第一歩は、相続人の範囲を正確に把握することです。これを怠ると、相続に関する手続きが後になって複雑化し、場合によっては法的なトラブルに発展することもあります。しかし、相続人調査を行う際に注意しなければならない重要なポイントがあります。それは、戸籍が移動した際に、認知情報が消失する可能性があるという点です。この「認知情報の消失リスク」は、相続人調査を行う上で見落としやすい重要な要素であり、慎重に対応する必要があります。

認知と戸籍の関係

婚姻外で生まれた子供が法律上の父子関係を得るためには、父親による「認知」が必要です。認知が行われると、認知者(父)の戸籍に認知事項として、被認知者(子)の本籍や氏名が記載されます。同時に、被認知者(子)の戸籍にも父親の本籍や氏名が記載されます。しかし、戸籍が移動した際に、これらの認知情報が移記されないケースが発生する可能性があります。つまり、現在の戸籍に認知情報が記載されていない場合でも、過去の戸籍に遡って確認しなければならない可能性があるのです。

認知情報の消失が発生する原因

認知情報が現在の戸籍に記載されていない原因は、認知者(父親)が転籍(本籍地を移動すること)を行った場合にあります。戸籍は、転籍が行われた際に新しい本籍地に編製されますが、この過程で認知や離婚などの特定の身分事項が新しい戸籍に移記されないことがあります。このため、現在の戸籍だけを見て認知情報がないと判断してしまうと、相続人の範囲を誤って把握することになります。

転籍が行われたかどうかは、現在の戸籍の「戸籍事項」の欄を確認することでわかります。この欄には、転籍が行われた場合「転籍」と記載されており、その横に「転籍日」と「従前本籍」が記録されています。したがって、相続人調査の際には、現在の戸籍だけでなく、転籍前の戸籍も取り寄せて、認知情報が記載されていないかを確認する必要があります。

相続人調査の流れと注意点

相続人調査は、被相続人の最終戸籍を取得することから始まります。しかし、最終戸籍だけでは相続人の範囲を正確に把握できない場合があります。特に、被相続人が過去に転籍を行っている場合は、必ず過去の戸籍も取り寄せる必要があります。転籍が繰り返されている場合は、さらに前の戸籍まで遡って確認しなければなりません。

このような戸籍調査を怠ると、相続手続きが進行した後に新たな相続人が判明し、すでに行われた遺産分割協議のやり直しを余儀なくされる場合があります。また、相続人の存在が発覚した際には、相続財産の分配に関するトラブルが発生する可能性もあります。そのため、相続人調査を行う際には、戸籍を遡って調査することが非常に重要です。

認知情報と養子縁組情報の確認

認知情報と同様に、養子縁組情報も戸籍の移動によって見落とされる可能性があります。養子縁組は、法律上の親子関係を成立させるものであり、相続においては実子と同様の相続権が発生します。したがって、相続人調査の際には、養子縁組が行われているかどうかも確認する必要があります。

養子縁組が行われた場合、その情報も認知情報と同様に戸籍に記載されますが、転籍が行われた際に新しい戸籍に移記されない場合があります。そのため、養子縁組が行われているかどうかを確認するためには、認知情報と同様に過去の戸籍を遡って調査することが必要です。

相続人調査を行う際の具体的な手順

相続人調査を行う際には、以下の手順に従って進めることが推奨されます。

  1. 被相続人の最終戸籍を取得: 最初に、被相続人の最終戸籍を取得します。この戸籍に基づいて、現在の家族構成や相続人の範囲を把握します。
  2. 戸籍事項欄の確認: 最終戸籍の「戸籍事項」の欄を確認し、被相続人が転籍を行っているかどうかを確認します。転籍が行われている場合は、転籍前の戸籍を取得します。
  3. 過去の戸籍の取得と確認: 転籍前の戸籍を取得し、認知情報や養子縁組情報が記載されていないかを確認します。転籍が繰り返されている場合は、さらに遡って過去の戸籍を取得します。
  4. 相続人の確定: すべての戸籍を確認したうえで、最終的な相続人の範囲を確定します。この際、認知されている子や養子縁組が行われている子がいないかを慎重に確認します。
  5. 相続人の関係者への通知: 相続人が確定したら、遺産分割協議を進めるために、すべての相続人に通知を行います。この際、相続人全員の同意が必要であるため、遺産分割協議書の作成と署名を進めます。

まとめ

戸籍が移動する際に認知情報や養子縁組情報が消失するリスクは、相続人調査において見落としやすい重要なポイントです。相続手続きにおいて、すべての相続人を正確に把握することは、後々のトラブルを避けるためにも非常に重要です。相続人調査を行う際には、現在の戸籍だけでなく、過去の戸籍も含めて慎重に確認し、認知や養子縁組に関する情報を見落とさないようにすることが求められます。

遺産分割協議を円滑に進めるためにも、相続人調査を適切に行い、正確な情報をもとに手続きを進めることが重要です。相続手続きの複雑さや法的なトラブルを未然に防ぐためにも、相続人調査においては、戸籍の移動や認知情報の消失に注意を払い、適切な手続きを行うことが求められます。

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