不動産が共有名義だった場合の相続手続き トラブルを防ぐために知っておきたいポイント

不動産の相続において、被相続人が他の人と「共有名義」で所有していた場合、通常の相続と異なる注意点があります。
たとえば、亡くなった方が配偶者と不動産を2分の1ずつ共有していたケースや、親子・兄弟間で共有していたケースなどです。

共有名義の不動産をそのままにしておくと、後々トラブルの種になりやすく、相続人間での話し合いがまとまらないことも珍しくありません。

この記事では、共有名義不動産の相続手続きについて、その基本から具体的な手順、トラブル回避のコツまで、東京都江東区・沖縄県那覇市の実情を踏まえて丁寧に解説します。

目次

1.そもそも「共有名義」とは?

不動産の所有権は、1人で持つ「単独名義」と、複数人で共有する「共有名義」の2種類があります。

共有名義とは、登記簿上で複数人がそれぞれの「持分割合」を持っている状態です。
たとえば、次のようなケースがあります。

  • 夫婦で持分2分の1ずつの自宅
  • 親と子がそれぞれ持分を登記している土地
  • 相続で兄弟3人が均等に分け合った不動産

このうちの1人が亡くなった場合、その人の持分だけが相続の対象となります。
ただし、共有状態が続くと、その後の売却・利用に支障が生じるケースもあります。

2.共有持分の相続方法

共有名義のうち、亡くなった方の持分については、他の財産と同様に相続人に引き継がれます
引き継ぎ方は、大きく分けて以下の2つです。

2-1.法定相続分で相続する

相続人が複数いる場合、遺言がない限りは民法の規定に従い法定相続分で共有持分を承継します。
例えば、父親が持分1/2を持っていた不動産を、母と子2人が法定相続すると、次のような分割になります。

  • 母:1/4(父の1/2のうち1/2)
  • 子A:1/8
  • 子B:1/8

この場合、不動産は最大4人の共有状態となり、さらに複雑になります。

2-2.遺産分割協議で特定の相続人が引き継ぐ

相続人全員で遺産分割協議を行い、被相続人の持分を1人にまとめることも可能です。

  • 長男が父の持分1/2をすべて相続
  • 残りの相続人は金銭などで代償を受ける(代償分割)

不動産をすっきり管理したい場合や、売却を見据えている場合には、持分を1人に集約するのが理想的です。

3.相続登記の方法と注意点

共有持分の相続でも、2024年4月以降は相続登記が義務化されており、3年以内の登記申請が必要です。

3-1.必要書類

  • 被相続人の戸籍一式(出生から死亡まで)
  • 相続人の戸籍・住民票
  • 不動産の登記事項証明書(法務局で取得)
  • 固定資産評価証明書(市区町村役場)
  • 遺産分割協議書(協議した場合)
  • 相続人全員の印鑑証明書

3-2.登記の方法

持分の相続登記は、通常の相続登記と同様に法務局へ申請します。
ただし、「共有持分を相続する」形になるため、登記申請書には持分割合の記載が必要です。

4.共有名義不動産で起きやすいトラブル

4-1.売却やリフォームが進まない

共有者のうち1人でも同意しない限り、不動産の売却・処分・建替えはできません。
被相続人の持分が相続人に分散してしまうと、意見の調整が難しくなります。

4-2.持分の価値評価が難しい

共有持分は単独では利用しにくく、市場価値も低くなりがちです。
第三者に売却しても思うような価格がつかず、**「共有者以外に売れない不動産」**になってしまうこともあります。

4-3.相続人の1人が行方不明・音信不通

共有者の一部が連絡不能となると、売却や登記変更ができなくなります。
そのまま放置すると、不動産の活用も困難になります。

5.共有名義不動産をめぐる実務的な対処法

共有名義不動産の相続では、できる限りトラブルの種を減らす工夫が重要です。

5-1.遺産分割で持分を整理

遺産分割協議により、1人の相続人にまとめるのがベストです。
それが難しい場合は、代償金を支払って持分を買い取る方法も検討できます。

5-2.共有物分割請求も可能

共有状態のまま話し合いが進まない場合、民法上の共有物分割請求を行うことができます。

  • 協議による分割
  • 家庭裁判所への調停申立て
  • 最終的には裁判所が売却を命じることも

ただし、この方法は時間と費用がかかり、相続人同士の関係に亀裂を生む可能性もあります。

5-3.遺言で持分の承継者を指定しておく

生前に遺言を作成しておけば、特定の相続人に不動産の持分を承継させることが可能です。
特に、共有状態を避けたいと考えている場合には、有効な手段となります。

6.江東区・那覇市での対応のポイント

6-1.江東区のケース:都市部ならではの資産価値とトラブル

江東区では、再開発や地価の上昇により不動産の相続トラブルが増えています。
共有名義を解消せずに放置していた土地が、再開発の対象となり揉めるケースも多いため、早期の相続登記と整理が肝要です。

6-2.那覇市のケース:相続人の分散と権利の細分化に注意

沖縄では、相続人が本土や海外にいるケースも多く、共有名義の不動産が複雑化しやすい傾向があります。
戸籍の確認や書類の取得に時間がかかるため、早めの準備と話し合いが大切です。

7.まとめ 共有名義不動産は「早めの整理」が鍵

共有名義の不動産は、相続後の取り扱いが非常にデリケートです。

  • 相続人が複数いると、持分がさらに細分化される
  • 売却や利用に同意が必要で、手続きが進みにくい
  • 放置しておくと、後の世代に大きな負担を残す

そのため、相続発生後は早めに話し合い、遺産分割協議や登記手続きを進めることが重要です。
可能であれば、持分を1人にまとめるなどして、共有状態を解消するのが理想的です。

不動産の持分相続についてお悩みの方は、専門家に相談することで、円滑かつ法的に確実な対応が可能になります。

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