名義預金とは?相続トラブルの回避法について

相続において、しばしば問題となるのが「名義預金」の存在です。名義預金は、相続人間での認識の違いや、被相続人の生前の資産管理の方法によって、トラブルに発展することが少なくありません。この記事では、名義預金の基本から相続におけるリスク、そしてトラブルを未然に防ぐための対処法までを詳しく解説します。東京都江東区や沖縄県那覇市で相続手続きを検討されている方にとって、ぜひ押さえておきたい重要なテーマです。

目次

1.名義預金とは?

名義預金とは、口座の名義は子どもや配偶者などの家族になっているものの、実際には被相続人が出資し、管理していた預貯金のことをいいます。つまり、名義だけが他人であって、実質的な所有者は被相続人という状態です。

具体例

たとえば、被相続人である父親が、自分の資金で長男名義の預金口座を開設し、その口座を自ら管理していた場合、それは名義預金と判断される可能性があります。

このような口座が被相続人の死後に発見されたとき、「長男の財産」とするのか、「相続財産」とするのかで相続人同士が対立することがあります。

2.名義預金が相続トラブルになる理由

名義預金は、財産の帰属が曖昧なため、相続時に以下のような問題を引き起こします。

(1)他の相続人からの不信感

名義預金が発覚した場合、他の相続人が「そのお金は被相続人の財産なのではないか」と疑念を抱くことがあります。特に、名義人が単独で管理していた場合、「こっそり財産を移していたのではないか」との疑いが生じ、感情的な対立を招きやすくなります。

(2)遺産分割の不公平感

名義預金が相続財産に加えられない場合、他の相続人は「その分だけ多く相続している」と感じることがあります。遺産分割協議が進まず、相続全体が停滞する原因にもなります。

(3)税務調査のリスク

税務署は、名義預金を相続財産とみなして課税することがあります。たとえ名義人が「これは自分の財産だ」と主張しても、出資や管理の実態を重視して、贈与税または相続税の対象になることがあります。

3.名義預金かどうかの判断基準

名義預金かどうかを判断するには、次のようなポイントを確認する必要があります。

(1)出資者は誰か?

誰の資金によって預金がなされたのかが最も重要です。名義人ではなく、被相続人自身が拠出したお金であれば、名義預金の可能性があります。

(2)通帳・印鑑の保管状況

通帳や印鑑を誰が保管し、管理していたのかも判断材料となります。被相続人が一人で保管していた場合、その預金は本人の財産とみなされる傾向があります。

(3)入出金の実態

口座に定期的な送金や引き出しがあり、それが被相続人によるものだった場合、実質的な所有者は被相続人である可能性が高いです。

(4)名義人の認識

名義人が「この口座は自分のものだと思っていなかった」「親に言われて名義を貸していただけ」という証言がある場合は、名義預金と判断されやすくなります。

4.相続時に名義預金が発覚したらどうすればいい?

名義預金が相続時に発覚した場合、感情的な対立を避けるためには冷静な対応が必要です。

(1)専門家に相談する

名義預金の判断には、法的・税務的な専門知識が必要です。弁護士や行政書士、税理士などに相談し、実態を整理しましょう。

(2)相続人間で情報を共有する

名義預金について、隠し立てせず情報を開示することが信頼関係の維持につながります。できるだけ早い段階で、通帳や出入金記録を見せ合うことが望ましいです。

(3)税務署への対応も忘れずに

税務署は、被相続人名義の預金だけでなく、相続人名義の預金も調査対象にします。もし名義預金が相続税の課税対象となる場合、正しく申告しなければ追徴課税や延滞税が発生する可能性もあるため注意が必要です。

5.名義預金によるトラブルを防ぐには?

名義預金を巡る相続トラブルは、事前の備えによってある程度回避できます。

(1)被相続人本人が意識的に資産管理を行う

高齢になると家族名義の口座を使って資産管理するケースが増えますが、これは将来の相続リスクを高める行為です。できるだけ自分名義の口座で資産を一元管理し、必要であれば「贈与」の形で名義変更をしておくことが重要です。

(2)贈与の証拠を残す

名義預金が「贈与されたお金」だと主張する場合は、贈与契約書を作成し、贈与税の申告をしておくことが有効です。そうすることで、名義預金ではなく、真に名義人の財産であると主張しやすくなります。

(3)エンディングノートや遺言書の活用

自分の資産の内容や管理方法、意向を明確に記録しておくことも有効です。特に遺言書を作成しておけば、遺産分割の際のトラブルを未然に防ぐことができます。

6.まとめ

名義預金は、相続における見えにくい落とし穴です。「名前が違うから自分の財産ではない」と軽視すると、後々大きなトラブルを引き起こす可能性があります。とくに東京都江東区や沖縄県那覇市のように、家族間のつながりが深い地域では、名義預金をめぐる感情的な争いが相続の妨げとなることもあります。

相続は「争族」になっては意味がありません。名義預金に関する認識を深め、必要に応じて行政書士などの専門家に早めに相談することで、円満な相続の実現を目指しましょう。

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