建設業許可における「その他の要件」、誠実性と欠格要件について徹底解説

建設業の世界で事業を営むにあたって、建設業許可の取得は避けて通れない重要なステップです。許可を得るためには、経営業務の管理責任者や専任技術者といった「人的要件」や、一定の資産を持っているかを確認する「財産的基礎」など、さまざまな条件をクリアしなければなりません。

その中で、意外と見落とされがち、しかし非常に重要なのが「誠実性」と「欠格要件」に関する要件です。

この記事では、建設業許可申請において非常に大きな影響を及ぼすこれら「その他の要件」について、実務上のポイントや、よくあるご質問を交えながら詳しく解説していきます。

目次

1.「誠実性」とは何か?

まずは「誠実性」についてです。

建設業法では、申請者が誠実に業務を遂行することができる人物・法人であるかどうかが審査されます。許可行政庁が「この事業者は契約や工事の履行について不正や不誠実な行為をするおそれがある」と判断した場合、たとえ他の要件を満たしていたとしても、建設業許可を取得することはできません。

不誠実な行為とは?

この「不誠実な行為」とは、単なる社会常識上のマナー違反というレベルの話ではなく、以下のような具体的な行為が対象となります。

  • 建設業法、建築士法、宅地建物取引業法などの法律に違反し、免許取り消しや業務停止の処分を受けた
  • 請負契約に関して、虚偽の内容で契約を締結したり、一方的に工事を放棄したりした
  • 工事の瑕疵を放置し、安全性を著しく欠いた状態で引き渡した

5年以内に処分歴がある場合はNG

特に重要なのが、「過去に処分を受けたかどうか」という点です。

具体的には、建設業法や関連法令に違反して処分(免許取消・営業停止など)を受けてから5年が経過していない事業者は、「誠実性を欠く者」として取り扱われ、建設業許可を取得できません。

この「5年の壁」は非常に厳格に適用されます。ですから、過去に問題を起こしたことがある場合には、その処分日から5年を経過しているかを必ず確認してください。

2.欠格要件について

次に、「欠格要件」です。

これは、そもそも法律上、建設業許可を申請すること自体が認められない条件をいいます。いくら事業内容が魅力的で、財産も技術者も揃っていたとしても、欠格要件に該当している場合は申請しても許可されません。

建設業法における欠格要件は多岐にわたっており、特に注意が必要です。

欠格要件に該当するケース

以下に主な欠格要件を挙げます。

  1. 成年被後見人・被保佐人または破産者で復権を得ていない者
  2. 不正の手段で建設業許可を受け、その許可を取り消されて5年以内の者
  3. 許可取消を逃れるため廃業届を出し、そこから5年を経過していない者
  4. 不誠実な行為や杜撰な工事で営業停止命令を受け、その停止期間中の者
  5. 禁錮以上の刑を受け、刑の執行終了または免除から5年を経過していない者
  6. 建設業法・建築基準法・労働基準法・暴力団排除条例等に違反して罰金刑を受け、執行から5年を経過していない者

役員・株主・相談役も対象!

ここで重要なのが、これらの要件は「法人の代表者」だけに限られないという点です。次のような人たちも対象になります。

  • 取締役
  • 執行役員
  • 相談役・顧問
  • 5%以上の株主 など

つまり、企業全体としてのコンプライアンスが問われているのです。役員の過去や、株主構成にまで目を向ける必要があります。

3.実務で多いご質問への回答

建設業許可のご相談を受けていると、欠格要件や誠実性に関してよくいただくご質問があります。その中でも特に多いものをいくつか取り上げて、解説いたします。

Q1:破産経験があるが、許可を受けられるか?

この質問は非常に多いです。特に中小企業の経営者様が再起を図ろうとした際に、「破産したから建設業許可はもう取れないのでは」と不安になるケースがあります。

結論から言えば、「免責決定を受けていれば許可取得は可能」です。

破産手続きの中で裁判所が「この人の借金を免除してもよい」と判断するのが「免責決定」であり、これが「復権」に相当します。復権を得ていれば、建設業法上の欠格要件には該当しません。

ですので、過去に破産したことがある方は、手元にある裁判所からの「免責決定書」などを確認してみてください。

Q2:刑事罰を受けたが、執行猶予が付いた。許可は受けられる?

こちらもよくあるご相談です。

結論としては、「執行猶予の期間が満了すれば、欠格要件に該当しなくなる」ため、その後は許可申請が可能です。

誤解されがちですが、「執行猶予期間が終わってからさらに5年間待たなければならない」というわけではありません。猶予期間の終了と同時に、欠格要件から外れるという扱いになります。

4.まとめ

建設業許可の取得において、誠実性や欠格要件のチェックは非常に重要です。

とりわけ「5年以内」という期限が厳しく設定されている点、また申請者本人だけでなく役員や株主にまで広く適用される点は、見落とすと致命的になりかねません。

破産や刑事罰など、過去に何らかの事情があった方も、適切な手続きや時間の経過によって、許可取得のチャンスが開かれているケースも多々あります。

もしご自身や法人の状況が該当するかどうかご不明な場合は、専門家に相談することをおすすめします。建設業は社会インフラを支える重要な業種です。健全な経営と法令遵守を前提として、多くの事業者様が許可を受け、安心して業務を行えるようサポートするのが私たち行政書士の役割です。

目次