
建設業許可には「どんな工事ができるか」「どこで営業できるか」「元請としてどの程度の受注能力が求められるか」に応じて、以下の4種の分類があります。
- 大臣許可 × 特定建設業
- 大臣許可 × 一般建設業
- 知事許可 × 特定建設業
- 知事許可 × 一般建設業
このうち最上位に位置するのが、「大臣許可」を取得し、かつ「特定建設業」を許可された企業です。今回はその意義と要件、取得のプロセスにフォーカスします。
目次
1.「大臣許可」とは? プロ向け全国展開のための前提条件
定義と対象企業
「大臣許可」は、営業所が複数の都道府県にまたがって存在する企業が対象で、
- 本社+支店×2以上、または
- 店舗数は1つでも、他県に常勤で人員がいる営業所がある
ときに必要となる許可です。
営業エリアの拡大を前提としている証
大臣許可を持っていることで、全国規模の営業展開が可能になります。携わる業務が都外にも広がる場合は、知事許可では対応できません。
2.「特定建設業」とは? 元請責任と体力・技術要件
資産と体力の要件
元請業者として、一件あたり下請け発注額4,000万円以上(建築⼀式は6,000万円以上)を想定する場合、「特定建設業」の許可が必要になります。これにより、下請業者への支払い責任を担える体力が求められます。
専任技術者要件の重層性
特定建設業では、専任技術者の要件も強化されます。
- 元請として4500万円超案件を2年以上管理
など、技術責任・管理実績が義務づけられます。
財産要件アップ
特定建設業では、財務要件が厳しくなり、
- 資本金2,000万円以上
- 自己資本4,000万円以上
- 流動比率75%以上、欠損比率20%未満
などが求められる点にも注意が必要です。
3.「大臣許可+特定建設業」は最上位の許可区分
対象企業のイメージ
- 全国・広域営業を目指す企業
- 大規模工事(公共工事の一次受注等)を視野に入れている企業
- 監理技術者を全国の現場に派遣するような企業
このライフスタイルを目指すなら、大臣許可特定建設業はゴールとなります。ただし、相応の経営体制と人材、財務余力が欠かせません。
難易度とハードル
- 多都道府県に営業所が必要(常勤技術者・役員常駐)
- 資産・技術・実務のすべての面でハードルが高い
- 特定建設業許可要件(大型案件能力の実証)も課題
この点を踏まえると、初回申請からこの区分を狙うのではなく、ステップ戦略をおすすめします。
4.ステップ取得戦略例
- 知事許可 × 一般建設業で第1フェーズ
- 資産・人員条件が比較的ゆるい
- 営業所は1県内でOK
- 経験を積むフェーズに最適
- 知事許可 × 特定建設業取得(同一県内で大型案件獲得)
- 技術者や財務体制を強化
- 元請案件(4000万円以上)に挑戦可能に
- 大臣許可 × 一般建設業へステップアップ
- 営業所を複数都道府県に設置
- 全国展開の準備として許可取得
- 最終ゴール:大臣許可 × 特定建設業
- 全国・公共大規模案件を受注可能に
- 企業としての飛躍の形
5.東京都・沖縄での地域的留意点
東京都江東区の場合
- 東京本社+支店複数の構成が多く、大臣許可のニーズが高い
- 公共工事入札には「特定建設業」の資格要件が求められることも
沖縄那覇市の場合
- 離島をまたぐ営業所展開の場合、大臣許可が現実的選択肢
- 県規模でも特定建設業は実務要件が重く、都内同様の戦略が必要
6.まとめ 自社にとっての最適な「型」を見極める
許可区分 | メリット | デメリット |
知事×一般 | 許可取得のハードルが最も低く、中小企業に向く | 全国展開・大型案件には対応不可 |
知事×特定 | 大型元請案件対応可能 | 財務・技術要件が追加で必要 |
大臣×一般 | 複数県展開が可能に | 営業所展開や技術者配置がハードル |
大臣×特定 | 全国+大型案件が標準化 | 最もハードルが高く、準備と体制整備が必須 |
- どこを目指すか? 事業規模・営業圏・受注したい工事に応じて、許可形態を逆算して検討することが成功のポイントです。
- 段階的な申請戦略:準備不足のまま高次の許可を狙うより、まず取得しやすい区分から経験と体制を整え、ステップアップするやり方が現実的・戦略的です。
次回記事では「大臣許可×一般建設業」や「知事許可×特定建設業」の特徴や取得のコツ、使い分け方について詳しく解説します。シリーズでお読みいただくことで、自社にとっての最適な許可取得ルートを明確に描ける内容としていますので、どうぞご期待ください。