
相続や遺言の手続きを確実に実現するためには、「遺言執行者(いごんしっこうしゃ)」の存在が欠かせません。
遺言執行者は、被相続人(亡くなった方)の遺言内容を実際の手続きに移す重要な役割を担う人物です。
その遺言執行者を「家族や親族」ではなく、「行政書士」「弁護士」「司法書士」などの専門職に依頼するケースが増えています。
本記事では、専門職を遺言執行者に選ぶことのメリットと、注意しておきたい点について詳しく解説します。
1 遺言執行者の基本的な役割をおさらい
遺言執行者とは、被相続人が遺した遺言を実現するために、財産の名義変更や分配、登記、銀行手続きなどを行う人のことです。
たとえば、遺言に「預金のうち1000万円を友人に遺贈する」と書かれていれば、遺言執行者はその預金を引き出して受遺者に渡す手続きを進めます。
また、「自宅を長男に相続させる」と書かれていれば、法務局で不動産登記の名義変更を行います。
このように、遺言執行者は遺言書の内容を実際に形にするための実務担当者です。
2 なぜ専門職を選ぶ人が増えているのか
以前は、遺言執行者として長男や信頼できる家族を指定することが一般的でした。
しかし、最近では行政書士や弁護士などの専門職を選ぶ方が増えています。
その背景には、次のような理由があります。
- 相続関係が複雑化していること
再婚家庭、相続人の多様化、法人を含む遺贈など、相続手続が年々複雑になっています。 - 相続人間の対立リスクが高いこと
家族内で感情的なトラブルが起こるケースが多く、身内では公平な執行が難しいためです。 - 金融機関や法務局で専門的対応が求められること
登記や預金の解約など、専門知識がなければ進められない手続きが増えています。
3 専門職を遺言執行者に選ぶメリット
(1) 手続きが迅速かつ正確に進む
専門職は法律知識と実務経験を備えており、登記・相続・税務などの関連手続を的確に行えます。
銀行の相続手続きや不動産の名義変更などもスムーズに進めることができます。
(2) 相続人同士のトラブルを防げる
専門職が中立的な立場で執行することで、感情的な対立を回避できます。
「長男が勝手に手続きを進めた」「誰にいくら渡したかわからない」といった不信感を防止できます。
(3) 公平で透明な財産処理ができる
専門職は職務上、法律に基づく記録・報告を行う義務があります。
どの財産を、どのように処理したかを明確に説明できるため、相続人全員が安心できます。
(4) 遺言内容の法的リスクを最小限にできる
遺言書の内容によっては、執行段階で法的な不備が見つかることがあります。
専門職が関わることで、実行不可能な内容を事前に修正・補足できるのも大きな利点です。
(5) 受遺者が確実に遺贈を受け取れる
専門職が関与すれば、受遺者(遺言で財産を譲られた人)への引き渡しが滞ることはほとんどありません。
特に、受遺者が相続人以外(友人・知人・法人など)の場合、専門職が関与していると確実に手続きが進みます。
4 専門職に依頼する際の注意点
(1) 報酬の確認を怠らない
遺言執行者の報酬は、財産の規模や内容によって異なります。
一般的には「相続財産の1〜3%」を目安に設定されることが多いですが、
不動産の数や手続きの複雑さにより、個別見積もりとなる場合もあります。
遺言書の中であらかじめ「遺言執行者の報酬は〇〇円とする」と明記しておくのが望ましいです。
(2) 信頼できる専門家を選ぶ
遺言執行者には高い倫理観と誠実さが求められます。
資格の有無だけでなく、
- 遺言・相続案件の実績が豊富か
- 地元での信頼性
- 説明が丁寧であるか
などを基準に選ぶと良いでしょう。
(3) 家族への理解を得ておく
専門職を指定する際は、家族にもその理由を伝えておくことが大切です。
「なぜ家族ではなく専門家を選んだのか」が理解されていないと、
後々「家族が排除された」と誤解されるおそれがあります。
(4) 財産の全体像を専門職に共有する
遺言執行者となる専門職には、預貯金・不動産・有価証券などの全容を正確に伝える必要があります。
一部の財産が漏れていると、遺言が実行できない部分が生じることがあります。
5 専門職に依頼するのが特に有効なケース
江東区や那覇市などでも、次のようなケースでは専門職を遺言執行者に選ぶことが非常に有効です。
- 相続人間の関係が複雑な場合
再婚家庭・兄弟姉妹の仲が悪い場合など。 - 不動産や法人関係の財産が多い場合
登記や会社株式の扱いなど、専門的手続きが必要なとき。 - 相続人以外に財産を遺す場合
受遺者が友人・内縁の配偶者・NPO法人などの場合。 - 遺留分侵害が予想される場合
相続人からの争いが生じやすいため、中立的立場の専門職が必要です。
6 遺言作成時に専門職を指定する方法
遺言書の中で「遺言執行者として〇〇行政書士(または〇〇弁護士)を指定する」と明記すれば有効です。
公正証書遺言で作成するのが最も確実で、死後に家庭裁判所で確認を受ける必要もありません。
また、遺言執行者には複数人を指定することもできます。
たとえば「主たる執行者を行政書士、副執行者を長男」としておけば、家族と専門職が協力して進めることが可能です。
7 まとめ
遺言執行者を誰にするかは、遺言内容を確実に実現できるかどうかを左右する大きなポイントです。
- 専門職を選べば、法的に正確で公平な執行が可能
- 手続きの負担を軽減し、家族間の争いを防止できる
- 費用は発生するが、それ以上に「確実な実現」という価値がある
江東区や那覇市のように家族構成が多様化している地域では、
家族間のトラブルを避け、確実に意志を残すためにも、
行政書士や弁護士などの専門職を遺言執行者に指定しておくことが有効です。
行政書士見山事務所は遺言の作成での遺言執行者の指定を多数受けております、お気軽にご相談下さい。