建設業許可に必要な「事業年度終了報告(決算変更届)」とは?提出の目的と実務のポイントを詳しく解説

建設業許可を取得した後も、事業者には様々な法的義務が課せられます。その中でも特に重要でありながら、毎年必ず行わなければならない手続きが「事業年度終了報告」、いわゆる「決算変更届」です。

この手続きは、許可の更新や経営事項審査(経審)に影響するだけでなく、怠った場合は行政指導や更新不可など重大な問題にもつながります。

本記事では、東京都江東区や沖縄県那覇市で建設業を営む方々を対象に、事業年度終了報告(決算変更届)の基礎知識から、具体的な書類内容、提出時期、注意点、そして実務対応のポイントまでを詳しく解説していきます。


目次

1. 事業年度終了報告(決算変更届)とは?

建設業法では、建設業許可業者は毎事業年度の終了後、一定の書類を行政庁に提出する義務があります。これが「事業年度終了報告(決算変更届)」です。

この手続きは、建設業者が健全な経営を行っているか、適正に工事を遂行しているかを行政が確認するためのものであり、許可の継続や更新、経審に大きく関わってくる非常に重要な届け出です。

法的根拠

  • 建設業法第11条第2項
  • 施行規則第9条の2

2. 提出が必要な事業者とは?

建設業許可を受けているすべての業者が対象です。元請・下請の区別や、法人・個人の違いを問わず、許可を保有している限り、毎年この届出が必要になります。

なお、許可を取得してから初めての決算期を迎えた際にも、必ず提出しなければなりません。


3. 提出期限と提出先

提出期限

  • 事業年度終了後4か月以内

たとえば、事業年度の末日が3月31日の場合、提出期限は7月31日となります。1日でも遅れると、「提出義務違反」として扱われ、更新時や経審での審査が不利になることがあります。

提出先

  • 都道府県知事許可の場合:各都道府県庁の建設業担当課
  • 国土交通大臣許可の場合:地方整備局等

東京都江東区の場合は東京都庁の「都市整備局都市基盤部建設業課」、那覇市の場合は沖縄県庁の「土木建築部建設業課」への提出が一般的です。


4. 提出書類の内容

提出が必要な書類は以下のとおりです。法人と個人で若干異なる場合がありますが、基本的には次の7種類の書類を準備します。

主な提出書類

  1. 変更届出書(様式第六号)
  2. 工事経歴書
  3. 直前3年の各事業年度における工事施工金額
  4. 使用人数
  5. 財務諸表(法人:貸借対照表、損益計算書、完成工事原価報告書など)
  6. 附属明細書
  7. 事業報告書(株式会社のみ)

工事経歴書と工事施工金額については、直前の1年間で実際に行った工事の内容や規模、発注者名などを正確に記載する必要があります。


5. 実務上のポイントと注意点

(1)工事経歴書の作成に注意

実際の施工内容や契約金額を記載する「工事経歴書」は、工事台帳や請求書、契約書などの資料をもとに作成する必要があります。記載ミスや実態と異なる内容で提出すると、経審や更新時に差し戻されるおそれがあります。

また、工事金額が大きい順に記載する必要がある点も注意が必要です。

(2)完成工事高と売上の整合性

工事施工金額や完成工事高と、財務諸表の売上高との間に著しいズレがあると、審査の際に説明を求められることがあります。必ず整合性のある内容に仕上げましょう。

(3)提出漏れが許可更新に影響

事業年度終了報告を1年でも提出していないと、5年ごとの許可更新の際に更新申請が受理されなかったり、指摘事項が多数発生する場合があります。早めの準備と提出が必要です。

(4)経審を受ける場合との関係

公共工事の入札に参加するには経営事項審査(経審)が必要ですが、経審を受けるには、その直前の事業年度終了報告が提出済みであることが前提条件になります。

そのため、経審のスケジュールと連動して、決算変更届をタイムリーに行うことが重要です。


6. よくある質問

Q1. 売上がゼロでも提出しなければなりませんか?

はい、必要です。 実際に工事を行っていない事業年度でも、「売上ゼロ」として報告する義務があります。

Q2. 赤字決算の場合でも大丈夫ですか?

赤字でも問題ありません。 経営状況を報告するための手続きであり、赤字だからといって届出できないわけではありません。

ただし、更新や経審時には財務内容が評価対象になるため、専門家と相談して対応方針を考えることが望ましいです。

Q3. 税理士に頼んでいれば、自動で届出されますか?

されません。 税理士が作成した決算書はベースとなりますが、建設業特有の様式(工事経歴書や完成工事原価報告書など)は、別途作成が必要です。行政書士など建設業許可に詳しい専門家に依頼することをおすすめします。


7. 東京都江東区・沖縄県那覇市の地域的傾向と実務対応

東京都江東区の場合

都内では行政の審査が比較的厳格であり、事業年度終了報告に関しても書類の正確性や整合性が強く求められます。複数の事業を営む法人では、建設業とその他の事業の売上や人員を明確に分けて記載することが重要です。

また、電子申請や事前予約が必要なケースもあるため、都庁の運用方針にも注意を払う必要があります。

沖縄県那覇市の場合

中小規模の事業者が多く、提出漏れが発生しやすい傾向があります。近年は行政側も法令遵守の徹底を図っており、届出漏れによる許可更新拒否や経審不受理の事例も報告されています。

地元の建設業協会や専門家との連携により、年間スケジュールを組んで対応することが重要です。


8. 建設業者が取るべき実務対応とアドバイス

建設業者が決算変更届の提出にあたって実務上とるべき対応をまとめます。

  • 事業年度終了後すぐに、決算書の準備に取りかかる
  • 工事台帳や請求書を整理して、工事経歴書を正確に作成
  • 専門家(行政書士)に作成・提出を依頼してミスを防ぐ
  • 提出期限をカレンダー等に明記し、年次管理体制を構築
  • 経審を受ける予定がある場合は早めに相談

まとめ

事業年度終了報告(決算変更届)は、建設業許可を持つ事業者にとって毎年欠かせない義務であり、事業の健全性を行政に証明する大切な手続きです。

提出を怠ると、許可の更新ができなかったり、公共工事に参加できないなど、経営上の大きな障害となることもあります。

日常の業務の中で手が回らないと感じる場合は、行政書士などの専門家に任せることで、手間を省きつつ確実な法令対応が可能になります。事業の信頼性を保ち、許可を長く維持するためにも、決算変更届はしっかりと管理していきましょう。

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