相続人が行方不明!どうすれば相続手続きは進められる?その方法について徹底解説

相続が発生したとき、「兄弟の一人と長年音信不通になっている」「相続人の一人の所在がまったくわからない」…そんな状況に直面することがあります。相続人全員の同意が必要な手続が多いため、行方不明の相続人がいると相続手続が止まってしまうことが少なくありません。

しかし、「行方不明=相続できない」わけではありません。法律にはこのような場合のための制度が用意されています。この記事では、相続人が行方不明の場合に取るべき対応方法を、段階を追って解説します。


目次

1.なぜ相続手続に相続人全員の関与が必要なのか?

相続手続では、遺産の分割や名義変更にあたり、相続人全員の意思確認が必要です。特に以下のような場面では、全員の同意や署名・実印の押印が求められます。

  • 遺産分割協議書の作成
  • 不動産の相続登記
  • 銀行預金の払戻し
  • 相続税の申告に関する遺産分割の内容確認

そのため、たとえ法定相続分がゼロであっても、相続人である限り協議への参加が不可欠です。一人でも所在不明だと、協議そのものが成立しません。


2.相続人が行方不明だった場合に考えられる主な選択肢

以下の3つの手続が代表的です。ケースに応じて、どの方法が最適かを見極める必要があります。

  1. 不在者財産管理人の選任
  2. 失踪宣告の申し立て
  3. 特別代理人の選任(相続人が未成年の場合など)

それぞれの制度を詳しく見ていきましょう。


2-1.不在者財産管理人の選任申立て

どんなときに使う?

相続人の所在が分からず、遺産分割協議ができないときに有効です。
民法では、「従来の住所または居所を去ったまま戻らず、音信も不通である者」を「不在者」と定義し、財産管理のために家庭裁判所が管理人を選任できるとしています(民法第25条)。

申立ての流れ

  1. 管轄家庭裁判所(被相続人の最後の住所地)に申立書を提出
  2. 管理人候補者の選定(親族や第三者、弁護士など)
  3. 家庭裁判所の審査・選任
  4. 選任された不在者財産管理人と遺産分割協議を実施

管理人は、行方不明の相続人に代わって協議に参加します。
ただし、遺産分割協議については「家庭裁判所の許可」が必要になります(民法第28条)。

手続に必要な書類(例)

  • 申立書
  • 不在者の戸籍・住民票除票または戸籍の附票(行方不明の証明)
  • 申立人の戸籍謄本
  • 相続関係説明図
  • 財産目録
  • 申立手数料(800円収入印紙)
  • 連絡用郵便切手(裁判所指定)

注意点

  • 管理人に報酬が発生する場合があります。
  • 裁判所が選任するまで1〜2か月程度かかるのが一般的です。

2-2.失踪宣告の申立て(失踪者とみなして相続する)

どんなときに使う?

長期間にわたって消息が不明で、死亡しているとみなしても差し支えない場合に、失踪宣告の制度を使うことができます。

民法では、次の2つの失踪を定めています。

種類条件内容
普通失踪生死不明が7年間宣告により死亡とみなされる
特別失踪戦争・災害などの危難に遭遇し生死不明が1年間同上

失踪宣告が確定すれば、その行方不明者は「死亡した」と法律上みなされ、相続人ではなくなります。

メリット・デメリット

メリット

  • 協議から完全に除外でき、相続がすっきりする
  • 相続税や登記上の処理も簡単になる

デメリット

  • 失踪宣告の要件を満たすには時間がかかる
  • 申立てから6か月以上かかることが多い
  • 万が一、後に本人が現れた場合の対応が必要

2-3.未成年の相続人が行方不明者と親子関係にある場合は「特別代理人」の選任

少し特殊なケースですが、例えば未成年の子が相続人の一人で、行方不明の親が同じく相続人だった場合、遺産分割協議に親の代理として子が加わることができないため、「特別代理人」の選任申立てが必要です。

この制度も家庭裁判所に申し立てを行い、未成年者の利益を守るための代理人を立てるものです。


3.江東区・那覇市での実務ポイント

江東区の場合

江東区にお住まいの方は、東京家庭裁判所(本庁または江東出張所)が申立先となるケースが多く、戸籍・住民票などの取得が比較的迅速に行える地域です。
ただし、都内に複数の住所を移していた場合、複数の区役所に戸籍請求が必要になることがあります。

那覇市の場合

那覇市民は、那覇家庭裁判所が申立先となります。沖縄県内の離島などにかつて住んでいた相続人がいる場合、旧本籍地の戸籍や附票を取り寄せるのに時間がかかることがあります。
時間に余裕を持った申立準備が必要です。


4.相続人が行方不明だったときの流れ|早見チェックリスト

ステップやること関連制度
1相続人全員を調査戸籍収集・附票確認
2連絡先・住所を確認郵送・電話・関係者確認
3一定期間連絡がつかない場合不在者財産管理人の選任申立て
4長期不明(7年以上)の場合失踪宣告の申立て検討
5協議書作成・署名押印不在者の代理人を含めた協議
6名義変更・税務手続へ進行各相続手続

5.まとめ 行方不明者がいても相続は進められます

相続人の一人が行方不明になっていると、「手続はできないのでは?」と不安になる方も多いですが、法律ではきちんと対応手段が用意されています。

  • 一時的に連絡が取れない場合は、不在者財産管理人の選任
  • 長期の消息不明者には、失踪宣告
  • 未成年者の利益保護には特別代理人の選任

状況に応じて適切な制度を選び、家庭裁判所と連携しながら進めていくことが大切です。


江東区や那覇市での戸籍取得や家庭裁判所の対応には、地域ごとの実務的な違いもあります。
手続が複雑な場合は、行政書士などの専門家と連携し、スムーズな相続処理を目指しましょう。

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