
建設業許可申請において、単に申請書類を作成して提出するだけでは許可はおりません。申請書に記載した内容が「事実であること」を証明するための、いわば“裏付け資料”が不可欠です。
この裏付け資料のことを、「確認資料」と呼びます。
確認資料の出来・不出来が、許可の可否に直結するといっても過言ではありません。
本記事では、確認資料の種類、収集のポイント、注意点などを具体的にご紹介していきます。
1.確認資料とは何を意味するのか?
建設業許可申請における「確認資料」とは、以下のような情報を客観的に証明するために必要な書類です。
- 経営業務管理責任者の経営経験
- 専任技術者の実務経験
- 経営業務管理責任者および専任技術者が営業所に常勤していること
- 財産的基礎(資金面の要件)
- 社会保険や労働保険への加入状況
建設業許可は「虚偽の申請」を極端に嫌います。したがって、書面でしっかり裏付けがとれるよう、信頼性の高い客観資料を整えていくことが求められます。
2.確認資料の種類とその内容
(1)経営業務管理責任者に関する確認資料
経営業務管理責任者とは、一定期間、建設業における経営業務の管理に従事した経験のある人物を指します。
【主な確認資料】
- 登記事項証明書(商業登記簿謄本)
→ 取締役・代表取締役であった事実を証明 - 確定申告書の写し(個人事業主の場合)
- 法人税の申告書(法人代表だった場合)
- 建設業許可通知書の写し(旧勤務先が許可業者だったことの証明)
- 請負契約書や請求書、通帳の写し
これらを5年または6年以上(経営経験の要件年数)分、整える必要があります。
※なお、在籍した会社がすでに廃業している場合や、協力を得ることが難しい場合は代替資料の検討が必要となります。
(2)専任技術者に関する確認資料
専任技術者とは、営業所に常勤し、許可を受ける業種について一定の技術的能力を持つ者のことです。
【主な確認資料】
- 資格証明書(1級・2級施工管理技士、技術士など)
- 卒業証明書および成績証明書(学歴による要件を満たす場合)
- 実務経験証明書(実務経験により要件を満たす場合)
- 在籍証明書
- 工事請負契約書、注文書・請求書、写真、完了報告書など
学歴・資格による証明が難しい場合は、10年以上の実務経験を証明する必要がありますが、その場合の確認資料は特に多くなり、かつ取得難度が高くなります。
(3)常勤性に関する確認資料
経営業務管理責任者や専任技術者は、申請する営業所に「常勤」していることが必要です。これは形式的な要件ではなく、実質的な出勤実態が問われます。
【主な確認資料】
- 住民票(住所確認)
- 健康保険証(事業所の所属確認)
- 給与明細や源泉徴収票
- 雇用契約書(従業員の場合)
- タイムカードや勤怠表(必要に応じて)
特に、兼業や他事業所との掛け持ちが疑われるケースでは、詳細な資料が求められることがあります。
(4)財産的基礎に関する確認資料
建設業を継続的に営むためには、一定の資金的裏付けが必要です。これは申請時点での財産状況をもとに判断されます。
【主な確認資料】
- 直近の決算書(貸借対照表・損益計算書)
- 純資産が500万円以上あることの確認
- 預金残高証明書(自己資金による証明)
- 融資証明書(資金調達能力による証明)
- 過去5年間許可業者だったことの証明(継続要件)
このうちどれを使うかは、会社の財務状況や申請のタイミングにより異なります。
(5)保険関係の加入状況確認資料
労働者を雇用する事業者には、以下の社会保険・労働保険への加入が義務付けられています。
【主な確認資料】
- 雇用保険の適用事業所証明書
- 健康保険・厚生年金保険の適用通知書
- 労災保険関係成立届の控え
加入状況は、許可の審査対象となることがあるほか、指導・監督の面でも重要です。未加入が発覚した場合、指導の対象や場合によっては許可の取得自体が難しくなるケースもあります。
3.確認資料収集でよくある困りごと
1)過去に在籍した会社が協力してくれない
→ 一定期間以上前の勤務先から、実務経験証明書や在籍証明書を取得する必要があるにもかかわらず、「会社がすでにない」「協力してくれない」というケースは非常に多くあります。
この場合は、注文書・請求書・契約書・写真などを組み合わせて、実務経験を証明する形にする必要があります。
2)書類の保管が不十分
→ とくに個人事業主として活動していた方の場合、「領収書も台帳も残していない」というケースが見られます。記録がない場合は、金融機関の通帳、請求書控え、工事写真などを再構成して、証明資料を整える努力が必要になります。
4.申請を見越した早めの準備が重要
確認資料の収集・作成は、申請書類作成よりも時間がかかるケースが多くあります。次のような観点で、早めの準備をおすすめします。
- 資料が手元にない場合は、取得に時間がかかる
- 関係先への依頼が必要な場合、時間調整が必要
- 形式不備があれば差し戻しの可能性がある
- 都道府県により必要資料が異なる
申請直前になって慌てることのないよう、できれば数ヶ月前から確認資料の準備を進めておくのが理想的です。
5.まとめ 確認資料は「実績の見える化」
建設業許可を取得するうえで、確認資料はただの添付書類ではありません。
これは申請者の「実績」「経歴」「信頼性」「安定性」を、第三者である行政庁が判断するための、最重要資料です。
裏付けのない申請書類は受け付けてもらえませんし、不完全な確認資料による申請は、差し戻し・不許可の原因にもなります。
一方で、資料が十分に揃っていれば、スムーズな許可取得や、将来の更新・業種追加の際にも大きなメリットとなります。
東京都江東区や沖縄県那覇市のように、建設業が地域経済を支える重要な産業である地域において、許可の適切な取得は事業の信用力を高める大きな武器となります。
確認資料の収集・整理・活用は、建設業経営の「土台づくり」そのものと考えて取り組んでいきましょう。