
建設業許可の取得・維持において、最も重要な要件の一つが「専任技術者の配置」です。営業所ごとに必ず専任技術者を置かなければならず、欠けると許可要件を満たさなくなります。
ところが、実際の現場では専任技術者の退職や異動が突然発生することがあります。このとき、適切な対応を怠ると、許可の取り消しや業務停止といった重大なリスクに直結します。
本記事では、専任技術者が退職した場合に想定されるリスクと、その具体的な対処法について詳しく解説します。東京都江東区や沖縄県那覇市で事業を営む皆様にとっても、日常的に直面しうる課題ですので、ぜひ参考にしてください。
1. 専任技術者の役割と重要性
専任技術者は、建設工事の技術的な責任を担う存在です。主な役割は次の通りです。
- 工事の技術管理を行う
- 下請業者や発注者への技術的な対応
- 品質や安全に関する指導
- 営業所に常勤して建設業務に専従する
専任技術者が不在になると、「技術的に責任を持つ人材がいない状態」と見なされ、許可要件を欠くことになります。そのため、行政庁は非常に厳格に取り扱います。
2. 専任技術者が退職した場合のリスク
(1) 建設業許可要件を喪失する
専任技術者がいなくなると、建設業法第7条の要件を満たさなくなります。この状態が長く続くと、許可の取消処分を受ける可能性があります。
(2) 新規工事の受注に支障が出る
発注者は契約時に専任技術者の有無を確認します。不在が明らかになると、新規の受注は難しくなります。特に公共工事では契約自体が不可能になります。
(3) 許可更新や業種追加ができない
更新時や業種追加申請時に専任技術者が不在であれば、不許可となります。
(4) 信用低下・契約解除リスク
元請や取引先から「技術体制が不安定」と見られ、取引停止や契約解除につながるケースもあります。
3. 退職リスクが高い背景
専任技術者は高度な資格や経験を持つため、転職市場での需要が高く、待遇次第で退職する可能性があります。特に以下のような場合は注意が必要です。
- 賃金が業界水準より低い
- 他社から好条件のオファーを受けている
- 名義貸し的に雇用している場合(勤務実態が乏しいため早期退職しやすい)
4. 専任技術者が退職した際の具体的な対処法
(1) 速やかに代替者を選任する
最も重要なのは、退職直後に新しい専任技術者を配置することです。
候補者は以下の条件を満たしている必要があります。
- 必要資格を有している、または必要な実務経験を有する
- 営業所に常勤できる
- 他社との兼任がない
可能であれば、事前に社内で複数の人材を育成しておくと安心です。
(2) 行政庁への速やかな報告
専任技術者の変更があった場合、原則として速やかに都道府県や国土交通省に「変更届」を提出しなければなりません。
提出書類例
- 専任技術者変更届
- 新任技術者の資格証明書(資格証の写しや実務経験証明書)
- 常勤性を確認する資料(健康保険証、雇用契約書など)
(3) 一時的に不在となる場合のリスク対応
万一、新しい専任技術者がすぐに見つからない場合でも、次の対応を取っておくとリスクを軽減できます。
- 取引先に事情を説明し、理解を得る
- 行政庁に相談し、補足資料や経過報告を行う
- 外部から早期に資格者を採用する準備を進める
5. 東京都江東区での実務上の注意点
東京都は全国的にも審査が厳しい地域の一つです。江東区での申請でも、専任技術者の不在は厳格に扱われます。
- 変更届の提出は早めに行うこと
- 新任者の常勤性を示す資料が不十分だと補正指示が出やすい
- 突発的な退職に備えて、複数の候補者を常に検討しておくことが望ましい
6. 沖縄県那覇市での実務上の注意点
那覇市を含む沖縄県では、中小建設業者が多いため、専任技術者の確保に苦労するケースもあります。
- 退職が発生した場合、行政庁へ相談すると柔軟に対応してくれることもある
- ただし名義貸し防止の観点から「実際の常勤性」は厳しく確認される
- 外部資格者を採用する際には、雇用契約書や給与支払いの実態をきちんと整える必要あり
7. 退職リスクを軽減するための事前対策
(1) 社内人材の育成
長期的には、若手社員に資格取得を支援し、社内から専任技術者を育成することが最も安定的です。
(2) 雇用条件の改善
待遇が悪いと資格者は流出しやすいため、業界水準に見合った給与設定を行いましょう。
(3) 契約上の工夫
外部資格者を雇う場合には、退職時の引継ぎや一定期間の就業を契約に盛り込むとリスクを軽減できます。
(4) 行政書士への事前相談
専任技術者の退職リスクは事業継続に直結します。許可要件を欠かないためにも、専門家に相談しながら体制を整えることをおすすめします。
8. まとめ
専任技術者が退職した場合のリスクと対処法を整理すると、以下の通りです。
- 退職により建設業許可要件を欠くと、取消処分のリスクがある
- 新規受注や許可更新に支障が出る
- 取引先からの信用低下につながる可能性がある
- 速やかに代替者を選任し、変更届を提出する必要がある
- 東京都江東区では厳格に確認されるため、常に候補者を用意しておく
- 那覇市でも柔軟性はあるが、名義貸し防止の観点から実態確認が重視される
専任技術者の退職は、どの建設業者にも起こり得るリスクです。しかし、事前の備えと迅速な対応を徹底すれば、許可の維持と事業の安定は十分に可能です。
建設業許可申請に精通した行政書士見山事務所までお気軽にご相談下さい。