前回は公共工事入札までの流れを解説しましたが、今回は経営事項審査のしくみについてです。
公共工事に入札するために必要な経営事項審査について – 行政書士 見山事務所 (miyamashinji.jp)
経営事項審査は、申請した企業の客観的評価が数字により明確化されており、次の5項目が点数化されています。
➀ 業種別完成工事高(X1)
② 自己資本・平均利益(X2)
③ 経営状況分析の結果(Y)
④ 技術力(Z)
⑤ 社会性(W)
※ カッコ内のアルファベットはそれぞれの項目を表す記号として使用されます。
これを掛け合わせて計算した、総合評定値(P)が算出されます。
総合評定値(P)
P点は、経営事項審査を受ける業種ごとに算出されます。
計算式は以下のとおりです。
P(総合評定値)=0.25×(X1) + 0.15×(X2) + 0.2×(Y) + 0.25×(Z) + 0.15×(W)
掛け合わせる数字は、総合評定値を構成する割合(ウエイト)を意味しています。
よって総合評定値に影響する大きさは
業種別完成工事高・技術力 > 経営状況分析の結果 > 自己資本平均利益・社会性という順番と言えるわけです。
業種別完成工事高(X1)と技術力(Z)は、業種により点数を分けて計算されます。
土木工事業 | 建築工事業 | |
X1 | 1,000 | 1,200 |
X2 | 1,000 | |
Y | 800 | |
Z | 800 | 1,000 |
W | 960 | |
P | 904 | 1,004 |
つぎに先ほどの5項目について見ていきます。
➀ 業種別完成工事高(X1)
完成工事高は、経営事項審査を受ける業種ごと直前2期または直前3期の年間完成工事高の平均を基にします。これを下記リンク先の一覧表に当てはめ、X1の点数が算出されます。
※ 参考元 ㈱建設業経営情報分析センター様より
完成工事高評点X1算出テーブル | 経審(経営事項審査)の解説 (ciac.jp)
② 自己資本・平均利益(X2)
自己資本額と平均利益額の2点から、以下の計算式で算出されます。
X2 = (自己資本額評点+利益額評点)÷ 2
自己資本額、利益額それぞれの評点を出す計算方法を見ていきます。
自己資本額とは
自己資本額とは、決算書における貸借対照表にある純資産の合計額をさします。X2における自己資本額の評価は、審査基準日または直前2期平均のいずれかを選択できます。
これを下記リンク先の一覧表に当てはめ、自己資本額の評点が算出されます。
自己資本額算出テーブル(X21) | 経審(経営事項審査)の解説 (ciac.jp)
平均利益額とは
平均利益額とは、営業利益に減価償却費を足し戻した額を直前2期の平均で評価されるしくみとなっており、企業の収益力を測ることができます。
直前2期それぞれに、損益計算書にある営業利益と減価償却費を足した額を計算しその平均を、下記リンク先の一覧表に当てはめ、平均利益額の評点が算出されます。
平均利益額算出テーブル(X22) | 経審(経営事項審査)の解説 (ciac.jp)
③ 経営状況分析の結果(Y)
経営状況分析は、国土交通大臣による登録を受けた分析機関が行ないます。10社あり、これはどちらを選んでも構いません。
④ 技術力(Z)
技術力とは、技術職員数と元請完成工事高の2項目で構成され、以下の計算式で算出されます。
Z = 技術職員数の点数×0.8 + 元請完成工事高の点数×0.2
技術職員数の点数について
技術職員数の評点計算は、まず経営事項審査を受ける業種ごとに加点対象となる保有資格者の数と決められた数字を掛け合わして技術職員数値を算出します。
・一級かつ監理技術者数×6
・一級技術者数×5
・一級技補士数×4
・基幹技能者数×3
・二級技術者×2
・その他技術者×1
この数値に、下記リンク先の一覧表に当てはめて算出されます。
技術職員数点数Z1算出テーブル | 技術力評点Z (ciac.jp)
業種別の元請完成工事高について
業種別における直前2年または3年前の年間平均元請完成工事高に基づいて、下記リンク先の一覧表に当てはめて算出されます。完成工事高なので、兼業売上(建設業以外の売上)を含まないのは注意です。
元請完成工事高点数Z2 | 技術力評点Z | 経審の解説 (ciac.jp)
⑤ 社会性(W)
社会性とは、建設事業者が社会的責任を果たしているかを中心に評価されるものです。
W1からW9までの項目を以下の計算式で点数化します。
W =(W1+W2+W3+W4+W5+W6+W7+W8+W9)×100×190/200
つぎにW1からW9までの項目とは何かについてです。
W1(労働福祉の環境)
雇用保険、健康保険、厚生年金保険、建設業退職者共済制度、退職一時金制度または企業年金制度、法定外労働災害補償制度の加入・導入の有無により算出されます。
W2(建設業の営業年数)
建設業許可を受けてから現在までの年数を基に算出されます。
W3(防災協定締結の有無)
国や地方公共団体等との間に防災協定が締結されていれば15点加点されます。
W4(法令遵守の状況)
審査対象年に営業停止処分を受けた場合は減点されます。
W5(建設業の経理に関する状況)
監査受審状況の点数+公認会計士・建設業経理士等の数の点数により算出されます。
W6(研究開発の状況)
研究開発費の平均額を基に算出されます。
W7(建設機械の保有状況)
建設機械の保有台数により算出されます。
W8(ISOの登録状況)
ISO規格の登録状況により算出されます。
W9(若年技術者の育成および確保の状況)
前回の審査時から増加した若年技術者の人数により算出されます。
経営事項審査は公共工事の参加に必須ですが、その手続きや仕組みは大変複雑です。経営事項審査についてお悩みがありましたら、幣事務所までお気軽にご相談ください。